せふぃろとの木のおはなし
大きな木がありました。
そこには色々な人たちが集まって、木が大きく育つように水をやったり、木陰でゆっくり休んだり、成った果実をみんなで食べたりして、ゆっくりとしたそれぞれの時間を居心地よく過ごしていました。
木の下で強くなるために修行していたこともありました。
木からダニが降ってきて痒がっている人を笑って怒られたこともありました。
木の上でともちゅんが寝ていたこともありました。
木が大きく育ちすぎて枝葉を切り取られたこともありました。
木の陰で悔しくて泣いたこともありました。
大きな木は何も言わず見守るように立っていました。
ある時から、木の世話もせずに果実だけを食べに来る人たちが現れました。
一生懸命に世話をして育てた果実はどんどん無くなっていきました。
木を守るために、果実だけを食べに来る人たちとちゃんとお話をして出て行ってもらいました。
その後、残ったみんなで大きな木を守っていくために考えました。
そして、大きな木に集まった色々な人たちは、大きな木の果実だけに価値を見出すのではなく、ひとりひとりの得意なことや、やりたいことを伸ばしていき、出来る事、やらなきゃいけないことにも向き合いながら、お互いに応援し合い、一日一日を過ごしていくことにしました。
大きな木の枝葉は何も言わずに頷くように揺れていました。
ある日、みんなのために美味しいトマトを作ろうとする人が出てきました。美味しいトマトを作るために色々調べたり努力を重ね試行錯誤しましたが、どうしても上手くいかず不味いトマトしか作ることが出来ませんでした。みんなは美味しいトマトが作れるようにその人の取り組みを応援していました。
不味いトマトしか作れなかった人は、自分のやりたいことだった美味しいトマト作りをみんなに応援してもらい、自分が出来る事、役に立つこともしようと思い、時間を作って地域の掃除の仕事をすることにしました。
いつか美味しいトマトを作ることを夢見て、人のために出来る事に取り組みながら力を蓄えて行きました。
いつか、大きな木が無くなってしまっても、それぞれが新しい環境で生きていくことが出来るように、ひとりひとりが例えば、美味しいトマトを作る取り組み(やりたいことを極めるための努力)のように、その道のプロ(職人、仕事人、専門職)として日々成長し、求められる役割や責任を全うすること(地域の掃除の仕事のような、人の役に立つことでその人が出来る事を行うこと)によって、社会に貢献していくことが出来るように取り組んでいくことにしました。
大きな木の上でともちゅんは安心した様子でニッコリと微笑んでいました。